息子が育てた“自撮り写真家”西本喜美子さん、最後まで飾らない笑顔を
「自撮りおばあちゃん」として多くの人々を笑顔にしてきた写真家・西本喜美子さんが、2025年6月9日、97歳で亡くなりました。
長らく病気療養中だったことを、同日、家族が西本さんのインスタグラムで発表。
インスタには
「母 西本喜美子 儀
かねてより病気療養中のところ 6月9日 97歳の生涯を閉じました」
と記され、故人の意志により葬儀は親族のみで執り行われることも併せて報告されました。
不思議なことに、そのわずか数日前にも、満開の桜を撮影する彼女の姿がインスタに投稿されており、まさに「最後の最後まで写真家」であったことが偲ばれます。
「ゴミ袋自撮り」で一躍話題に “自虐ユーモア”のパイオニア
西本喜美子さんが世間に広く知られるきっかけとなったのは、なんと「ゴミ袋にくるまった自撮り写真」でした。
ポリ袋にすっぽりと体を入れたその大胆な作品は、2011年の熊本県立美術館での個展で展示されたもの。
当初は「老人虐待では?」とクレームも入りましたが、実は本人による撮影と知って来場者は驚き、メディアでも大きく報道されることに。
以降、ユーモラスで少しブラックな「自虐系自撮り作品」の数々が、多くの人々の心をつかみました。
2025年6月時点でインスタグラムのフォロワーは38万人を超え、その人気は日本だけでなく海外にも広がっていました。
ネット上では
「勇気をもらった」
「こんな風に年を取りたい」
といった声があふれ、彼女の存在は“おばあちゃん写真家”の枠を越えて、人生を楽しむアイコンのようにもなっていました。
西本喜美子さん―波乱に満ちたプロフィール
1928年5月22日、ブラジルで農業指導をしていた両親のもとに生まれた西本喜美子さん。
1937年に日本へ帰国し、熊本で育ちました。
若い頃は美容師として働いていましたが、競輪選手だった二人の弟に憧れて競輪学校へ。
【西本喜美子展】
— ★ホープ君★ 防府競輪場キャラクター (@hofukeirin63) July 3, 2021
驚異の93歳インスタおばあちゃんが撮る!
@アスピラート(山口県防府市)
展覧会初日となる7/3(土)の今日は #西本喜美子 さんがアスピラートへご来館!※ワクチン接種済
なんと!西本さんは元競輪選手🚴
防府競輪からも資料提供を行いましたッ✨https://t.co/4VJcyrzeKg pic.twitter.com/3fvOkdc7zP
22歳で女子競輪選手となり、「白石三姉弟」として話題になりました。
引退後は結婚、出産、子育てと家庭に専念していた喜美子さん。
しかし、その人生はここでは終わりませんでした。
なんと72歳で、息子・西本和民さんが主宰する写真教室「遊美塾」に通い始め、写真の世界に足を踏み入れたのです。
写真を始めたきっかけは「息子」さん
西本喜美子さんの息子さんは写真家である西本和民さん。
西本和民さんが講師を務める写真教室に通う友人から、参加を誘われたことがきっかけでした。
「カメラで撮るのではなく、頭で撮る」。
そんな信念のもと運営されているのが、西本和民さんの「遊美塾」です。
和民さんはもともと東京でグラフィックデザイナーとして活躍し、CHAGE&ASKAや玉置浩二のジャケットデザインも手がけた人物。
やがて写真の世界にも足を踏み入れ、自ら写真を撮るようになりました。
そんな息子さんから写真のイロハを学んだのが母・喜美子さん。
最初は息子の生徒のような立場だった彼女が、いつしか教室の“名物”になり、ユーモアにあふれる唯一無二の作品で頭角を現すことになります。
彼女の作品に共通するのは、
「年齢を逆手に取った大胆さ」と「飾らない笑顔」。
ゴミ袋、物干し竿、アイマスク……そのどれもが、普通のおばあちゃんではまず選ばないシチュエーション。
しかし、そこには“人生を楽しむ知恵”と“自分を笑える余裕”がありました。
私自身、このような存在を目にしたとき、単なる写真ではなく“生き様”を見ているような気がしました。
カメラの前に立つ彼女の目はいつも真っ直ぐで、笑顔にはどこか、強さと愛が宿っていたように思えます。
西本喜美子さんという人間
97年の人生、そして72歳からの25年間の“写真人生”。
その歩みは決して平坦ではなかったはずです。
しかし、常にチャレンジを忘れず、新しいことを楽しむ姿勢は、あらゆる世代に勇気を与えてくれました。
息子の和民さんは、発表の中でこう綴っています。
「母は常に笑顔で作品創りを楽しんでおりました。
多くの皆様に笑いと喜びをお届けしたいという思いから、 数多くの作品を生み出してまいりました。
72歳から始めた写真でしたが、本当にたくさんの方々との出会いに恵まれ、母の第三の人生を本当に豊かなものにしてくれました。」
これは、まさに“生涯現役”という言葉を体現した人生。
死の直前まで桜を撮り続けたその姿は、多くの人の記憶に残るでしょう。
まとめ
西本喜美子さんが遺してくれたもの…。
それは単なる写真ではなく、「人生の楽しみ方」だったように思います。
年齢なんて関係ない。
笑って、自分らしく、思い切り生きることの美しさを、私たちはその生き様から学ばせてもらいました。
これからも、彼女の作品は見る人に笑顔を届け続けるでしょう。
心よりご冥福をお祈りいたします。
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